キミ、が欲しい



「あ、千晴ちゃん、過去分詞は特に過去を表してるわけじゃないの。だいたいが動詞を変形させたもので、ほとんどedを加えただけで出来ちゃうから…この例文で言うとね…」



「え、ハル、物理って角川先生だよね?ボルツマン定数習わなかった?気体定数をアボガドロ定数で割った値ってやつ」



みっちり2時間経って、ついに兄妹がギブアップしちゃいました。
あれ?やり過ぎた?



「星那さん、その顔面偏差値で頭良いとか憧れる。やっぱりお兄ちゃんにはもったいないよ〜」



「うるせぇ、」



「あ、晩ごはん何だろ?見てきまーす」と千晴ちゃんが出て行く。
大きなため息ひとつついたハルは「ごめんな、騒々しい家族で」と謝る。



「気にしてないよ、むしろ楽しいから」



「え〜そうかなぁ…」



「そんなことよりハル…」



「え?」



座り直してグッと体を近付ける。
顎に指を滑らせて……



「本当はキスしたいんでしょ?」



「なっ…!なな……ハイ」



クスクス……素直だね。
ちゃんと我慢してくれたけど。
目を閉じて近付く愛しい顔。
しばらく見てようか。



勢いよくドアが開いて
「ご飯出来たって!星那さんも一緒にどうですかって」と千晴ちゃん再び。
その場に倒れるハルと間一髪で元の位置に戻った私。
「お兄ちゃん何してんの?」と軽くあしらわれ可哀想。
ごめんね?ハル。



お母様も来て「いつものお礼がしたい」と言われ遠慮しつつご一緒させていただくことに。






< 76 / 115 >

この作品をシェア

pagetop