キミ、が欲しい



「ごめんなさいね、大したものじゃないけど…お口に合うかしら?」



並べられた料理を見て立ちすくんでいたらお母様が心配そうに仰って。
本当は脂の乗った焼き秋刀魚に感動してたあまりつい言葉を失ってたところで。



「いえ、どれも美味しそうです、ありがとうございます」



久しぶりにこんな家庭料理食べる。
「醤油取って」とか食事中に誰かと喋る行為。
隣に座るハルが私にも「星那も醤油いるよね?」って優しく聞いてくれるのとか……



私は久しく経験してない。



気付いたら皆さんにジーッと見られててハッと我に返る。



「星那ちゃん……とっても食べ方キレイね?きっと親御さんがきちんとしてらっしゃるのね、関心しちゃうわ」とお母様。
魚の食べ方を褒められるなんてことも初めてで戸惑う。



「本当何でこんなバカ息子なんかと…」



「母さん言葉!言葉気をつけて」



お母様とハルのやり取りも可笑しくてつい笑ってしまう。
何かすごく、温かいからとても居心地が良い。



「星那さん次いつ来る?テスト初日数学だからヤバくて」



「お前まだ教えてもらう気かよ」



「そうよ千晴、迷惑でしょ」



「え〜だって先生よりわかりやすかったもん。さすが学年トップは違うよねお兄ちゃん」



「え?」と思わずハルを見てしまう。
私…千晴ちゃんにそんなこと言ってないけど?
タラ〜と冷や汗かいてるハルがどんどん小さくなっていく。






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