キミ、が欲しい
家を出て駅までの道。
歩いて10分ほどで駅に着く。
定期を準備していたら目の前に人が現れてあわやぶつかりそうに。
目だけ動かして見上げると見覚えのある顔。
「星那、おはよう」
「え……拓海?なんで?」
「久しぶりに一緒に行かない?」
「拓海、S校でしょ?反対方向じゃん。ていうか…ここ最寄り駅でもないのに」
駅に入っていく学生たちがチラチラ見ていく。
“え、お似合いカップル”
拓海は中学では断トツでモテていた。
今もそうなんだろうけど。
「だってこうやって朝一番じゃなきゃ星那のこと独り占め出来ないでしょ?」
そうだ、平気でこんなことも言う人だったんだ。
とびきりのキラースマイルで自然に髪や手に触れてきたりする。
典型的なモテ男子。
彼氏居ようが関係ないって顔だね。
「何言ってんの?言っとくけど復縁なんて200%ないからね」
握られた手を解いて改札に向かう。
それでも隣はキープしてきて。
「再会して思ったんだ、何か…星那と付き合ってた頃の気持ち思い出しちゃって…別れてからも星那以上の女の子は居ないなって」
ピタッと立ち止まる。
「過去の気持ちに縛られないで、今を見たら?私は今の彼氏以上の人は居ないと思ってる」
キマった、と思ったのにちょこちょこ目の前に顔出してきて歩行を妨げる。
あんま人の話聞かない人でもあったよね。
「え、星那ひどーい。俺は今の彼氏よりどのくらい下なの?絶対俺の方がイケメンなのに〜」
「あ、中学でも可愛かったけど今の星那の方がタイプかも」
「放課後そっちの学校行っていい?」
極力無視してホームの階段前で「じゃあね」と行こうとしたら。
2段くらい上がったところで後ろから手を掴まれて振り返る。