キミ、が欲しい
電車が到着し、降りてくる人と乗る人が行き交うホームの階段。
端から見れば高校生カップルで彼氏が別れを惜しみ彼女の手を取ってるかのようなシチュエーション。
「俺、その200%、覆すつもりだから」
いつものスマイルはない真剣な顔。
稀に見る普段とのギャップに惚れてた昔の自分を思い出した。
でもそれは過去のこと。
掴む手を外す。
「本当にごめん。今の私には…彼が全てなの」
バイバイ、とゆっくり階段を上った。
来る日も来る日もあれから拓海は朝に会いに来てる。
少し進んだ駅でハルとは合流するから見られることはないんだけど。
「毎日飽きないね」
「え、だって会いたいんだもん」
たった数分しか顔を合わさないのに。
期待されても気持ちが動くことはないのに。
まるで出逢った頃のように、拓海は私に染み込んでこようとする。
「じゃあね〜」と手をブンブン振って違うホームに向かう。
こんなこといつまで続けるんだろ?
マメ過ぎんでしょ。
そしてやっぱり…想定はしてたけど学校まで押しかけてきた拓海。
勿論、ハルも麻衣子たちも一緒で。
「あ、星那〜!」って声に皆が振り返る。
え、なんで?って麻衣子の顔。
「あ、この前文化祭で一緒に居た彼氏だよね?俺はS校の須賀 拓海!ヨロシク!」
強張るハルと無表情な私。
梓が空気をよんで「須賀くん、どうしてここに?」と聞く。
「え〜ヒ・ミ・ツ」なんてはぐらかして何考えてんの?
どうせろくなこと考え…
「一緒に帰ろ〜!」とハルとは反対側に回り私の横につく。
「星那の隣ゲット〜」とか言うからバカじゃない?と言おうとしたらハルが私を引き寄せ真ん中に立った。