キミ、が欲しい



「俺は…!桜庭 晴人、です!」



勢いよく出たからめちゃ至近距離での自己紹介……ハルらしい。
私を拓海から遠ざけようとして?
後ろからひょっこり顔を出して「私の彼ね?」と念押ししておいた。



これで怯むかと思いきや、今度はハルを挟んで歩き出す。
普通にハルにも話しかけてるし。
この人懐っこさが憎めない理由でもあるんだけど。



方向的には梓と一緒の拓海。
私たちとはホームでお別れ。
「また会おうね〜」と帰って行く。



「何か…ごめんね?気を使わせて」



「ううん、めちゃくちゃ嫌な人…ではないと思うから」



「嫌な人だよ」



「えっ!?」



腰に手を回してギュッと身を寄せる。



「邪魔ばっかするからこうやってラブラブ出来ないもん」



「う、うん……そうだね」



「今日、家来る?」



「えっ……あ……えっと…」



モジモジしちゃって可愛い。
したいよね?
顔にそう書いてあるよ。



「え〜来ないの?」



「いや……えーっと……行こう、かな」






結城宅にて。




ブレザーを脱いでハンガーにかける。



「あ、明日くらいそっち行こうか?千晴ちゃんの数学…」



話してる背後からハルが抱きしめてきた。



「ハル…?」



「元カレ……なんだよね?」



やっぱり……気にしてるんだ。



「うん……でもわかってると思うけど、今は何もないからね?」



「うん……イケメン過ぎて…自信喪失」



「え、そこ!?」



「だって俺……勝ち目ない」



今にも泣きそうな顔。






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