女嫌い公爵との幸福なる契約結婚生活
ポットを傾け、ティーカップに紅茶をつぎ足しながら、セドリックは当然のように答える。
この若い家令は、ネイトとアイリーンの結婚の経緯を把握していた。十歳を過ぎて間もなくから、養父とともにネイトの世話をしていたらしく、ネイトのこともいろいろと熟知しているようだ。
「ねえ、セドリック」
「なんでしょう?」
「ずっと気になっていたんだけれど……、ネイト様はどうしてあそこまで女性がお嫌いなの?」
ネイトとは、結婚初日に契約事項を確認されたとき以来言葉を交わしていない。それでも、彼が異様なまでに女性を嫌っていることを、アイリーンはもう充分に知っていた。
セドリックは、一瞬真顔でアイリーンを見つめる。
「気になりますか?」
「ええ。何もしていないのに毛嫌いされているんですもの。せめて、理由を知りたいわ」
するとセドリックは微笑を浮かべ、語り出した。
「僕が初めてネイト様にお会いしたとき、ネイト様はもう成人されていましたからね。実際に見たわけではないのですが、父が言うには、幼い頃にお母様が家を出て行かれたのが原因のようです」
「……そう」
ネイトに実母はおらず、ネイトの父が再婚した義母がいるとは知っていた。ネイトの父は三年前に亡くなり、義母はネイトと半分血のつながった息子とともに、アッシュフィールド家の本宅に住んでいるらしい。
少々込み入った事情にも思えるが、貴族の家系にはありがちな話だ。それがどうして女嫌いにつながるのか、アイリーンは理解できないでいた。
この若い家令は、ネイトとアイリーンの結婚の経緯を把握していた。十歳を過ぎて間もなくから、養父とともにネイトの世話をしていたらしく、ネイトのこともいろいろと熟知しているようだ。
「ねえ、セドリック」
「なんでしょう?」
「ずっと気になっていたんだけれど……、ネイト様はどうしてあそこまで女性がお嫌いなの?」
ネイトとは、結婚初日に契約事項を確認されたとき以来言葉を交わしていない。それでも、彼が異様なまでに女性を嫌っていることを、アイリーンはもう充分に知っていた。
セドリックは、一瞬真顔でアイリーンを見つめる。
「気になりますか?」
「ええ。何もしていないのに毛嫌いされているんですもの。せめて、理由を知りたいわ」
するとセドリックは微笑を浮かべ、語り出した。
「僕が初めてネイト様にお会いしたとき、ネイト様はもう成人されていましたからね。実際に見たわけではないのですが、父が言うには、幼い頃にお母様が家を出て行かれたのが原因のようです」
「……そう」
ネイトに実母はおらず、ネイトの父が再婚した義母がいるとは知っていた。ネイトの父は三年前に亡くなり、義母はネイトと半分血のつながった息子とともに、アッシュフィールド家の本宅に住んでいるらしい。
少々込み入った事情にも思えるが、貴族の家系にはありがちな話だ。それがどうして女嫌いにつながるのか、アイリーンは理解できないでいた。