女嫌い公爵との幸福なる契約結婚生活
アイリーンは、ノアとともに庭先に咲いている花を愛で、シロツメクサの花冠を作ってやる。

涙で濡れたノアの顔が、次第に笑顔になっていく。

「アイリーン様」

きゃっきゃとはしゃぐノアを膝の上であやしていると、背後から冷ややかな声がした。

振り返ると、引き攣ったような笑みを浮かべたセドリックが立っている。

「何をしていらっしゃるのですか?」

「何って、ノアと遊んでいるのよ。シュバルツさんのお仕事が終わるまで」

「ですが、その子は使用人の子供ですよ? 公爵夫人であるあなたが、使用人の子供の面倒を見るなど、あってはならないことです」

ノアはセドリックに気づくなり、べっと舌を出した。きっとこの調子で、今までもあしらわれたことがあるのだろう。

アイリーンと離れたくないとでも言うように、ノアがしがみついてきた。微笑ましくなったアイリーンは、その小さな温もりをぎゅっと抱きしめ返す。

「ノア。私を、あなたのお友達にしてくれる?」

「うん、いーよ!」

ノアの無邪気な返事を聞いたあとで、アイリーンはセドリックに顔を向けた。

「セドリック、聞いたでしょ? ノアは、私のお友達よ。決して、”使用人の子供”なんかじゃないわ。公爵夫人である私の友達をもてなすことが、あなたの仕事ではないかしら?」
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