女嫌い公爵との幸福なる契約結婚生活
その日の夜。
湯浴みを終え自室で髪を櫛で整えていると、車輪と馬の蹄の音が窓向こうから聞こえてきた。
ネイトが帰宅したのだろう。窓辺に寄り外を見れば、軍服姿の彼が、ちょうど馬車から姿を現したところだった。
アイリーンは、意を決して部屋を出る。
螺旋階段を降り、玄関ホールに行くと、ネイトはセドリックに上着を脱がせてもらっているところだった。
久々に見る夫は、相変わらず整った顔をしていた。
そこにいるだけで、室温がぐんと下がるような冷徹な美しさ。
アイリーンはわずかに気圧されたものの、どうにか背筋を伸ばして声を張る。
「おかえりなさいませ」
白いブラウス姿のネイトは、ビクリと体の動きを止めたあとで、ゆっくりとこちらを振り返った。
アイリーンを視界に入れるなり、漆黒の瞳に、あからさまな嫌悪が浮かぶ。
「出迎えはいいと言っただろう」
彼の声は刺々しかった。
眉根を寄せ、体全体でアイリーンの存在を拒絶している。
「存じております。ですが、どうしてもお願いしたいことがありまして、こうして参りました」
「お願いしたいことだと? ドレスや宝石でも買って欲しいのか? 俺は贅沢な女は格別嫌いだ、忘れたのか?」
湯浴みを終え自室で髪を櫛で整えていると、車輪と馬の蹄の音が窓向こうから聞こえてきた。
ネイトが帰宅したのだろう。窓辺に寄り外を見れば、軍服姿の彼が、ちょうど馬車から姿を現したところだった。
アイリーンは、意を決して部屋を出る。
螺旋階段を降り、玄関ホールに行くと、ネイトはセドリックに上着を脱がせてもらっているところだった。
久々に見る夫は、相変わらず整った顔をしていた。
そこにいるだけで、室温がぐんと下がるような冷徹な美しさ。
アイリーンはわずかに気圧されたものの、どうにか背筋を伸ばして声を張る。
「おかえりなさいませ」
白いブラウス姿のネイトは、ビクリと体の動きを止めたあとで、ゆっくりとこちらを振り返った。
アイリーンを視界に入れるなり、漆黒の瞳に、あからさまな嫌悪が浮かぶ。
「出迎えはいいと言っただろう」
彼の声は刺々しかった。
眉根を寄せ、体全体でアイリーンの存在を拒絶している。
「存じております。ですが、どうしてもお願いしたいことがありまして、こうして参りました」
「お願いしたいことだと? ドレスや宝石でも買って欲しいのか? 俺は贅沢な女は格別嫌いだ、忘れたのか?」