女嫌い公爵との幸福なる契約結婚生活
「そうではなく――」
アイリーンは、料理人のシュバルツの帰宅時間を早めにしてもらうよう、ネイトに頼み込むつもりだった。
夕食を仕上げさえすれば、少々の時間なら、早く帰っても問題ないだろう。
少しでも、ノアに父親との時間を作ってあげたかった。
だが口を開きかけたそのとき、ひときわ怜悧な視線がアイリーンに刺さる。アイリーンは思わず、出かけた言葉をぐっと飲み込んだ。
「お前の話を聞くつもりはない。俺に干渉するなと言っただろう? 約束を破るなら、今すぐお前を着の身着のまま外に放り出すことも厭わない」
心からの侮蔑を孕んだ声だった。
(話を聞いてもらうことすらできないの……?)
もとより、彼に愛されたいとは思っていない。
だが久々に会ったというのに、ここまであからさまな憎しみを向けられると、アイリーンの胸はズキリと痛んだ。
唇が、縫い付けらたように動かなくなる。
そんなアイリーンを冷たく一瞥すると、ネイトはくるりと背を向け、コツコツと靴音を響かせながら自室の方へ遠ざかっていった。
アイリーンは、料理人のシュバルツの帰宅時間を早めにしてもらうよう、ネイトに頼み込むつもりだった。
夕食を仕上げさえすれば、少々の時間なら、早く帰っても問題ないだろう。
少しでも、ノアに父親との時間を作ってあげたかった。
だが口を開きかけたそのとき、ひときわ怜悧な視線がアイリーンに刺さる。アイリーンは思わず、出かけた言葉をぐっと飲み込んだ。
「お前の話を聞くつもりはない。俺に干渉するなと言っただろう? 約束を破るなら、今すぐお前を着の身着のまま外に放り出すことも厭わない」
心からの侮蔑を孕んだ声だった。
(話を聞いてもらうことすらできないの……?)
もとより、彼に愛されたいとは思っていない。
だが久々に会ったというのに、ここまであからさまな憎しみを向けられると、アイリーンの胸はズキリと痛んだ。
唇が、縫い付けらたように動かなくなる。
そんなアイリーンを冷たく一瞥すると、ネイトはくるりと背を向け、コツコツと靴音を響かせながら自室の方へ遠ざかっていった。