伝えたいこと、口じゃなくても
「ヒストリア、Are you all right？（大丈夫？）」

瞳は笑顔で訊ねる。ヒストリアは恥ずかしそうに言った。

「瞳先生は、誰かに恋をしたことってある？」

ヒストリアの頰は赤い。ワンピースのスカートを強く掴む手は微かに震えている。瞳は、過去のことを思い出しながら言った。

「……うん、あるよ」

ヒストリアの目が輝く。瞳も訊ねた。

「誰か好きな人がいるの？」

ヒストリアはコクリと頷く。頭の中には、好きな人が映っているのだろう。

「どうやって告白したの？」

ヒストリアにそう訊かれた時、瞳は真実を話すかどうか迷った。

瞳は中学生の時、同じクラスの男子に片想いをした。彼は特別かっこいいわけでも、勉強や運動がずば抜けてできるわけでもなかったが、とても優しい人だった。優しくされるたびに、瞳の中で想いが募っていった。

しかし、その男子と一緒に出かけた時に、運悪く両親と会ってしまった。
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