日本一の総長は、本当は私を溺愛している。
「わかった。
でもな、」



「なんだ」



「湯呑みは置いてけ」



しっかり握られたままの湯のみ。



どんだけ日本茶好きなんだよ。



「ん?おう、忘れてた。」



認知症。



足下に湯のみを置くと渉は組長の部屋に入る。



俺は入れる身分じゃないから待機。



目の前を男達が忙しそうに行き交う。



これから、黒田組と全面戦争。



東華の、生みの親。



ギュッと手をにぎりしめる。



俺は今から、
人を殺す。



ここからはもう
拳で語り合えるような子供の喧嘩じゃねぇ。



スーツの胸元に入ってる
ずっしりとした物を使う。



怖い、



が、そんな事は言ってられない。



ただ人を殺すということを
誓うのみ。



しゃ、



渉が出てくる。



「すぐに乗り込むのか?」



足をとめない渉の斜め後ろを歩く。



これもここで習ったこと。



同級生と言えど横を歩ける身分じゃない。



「あぁ、すぐだ」



「わかった」



「準備は」



「バッチリだ」



「ふ、期待してるぜ」



「あぁ、任された。」
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