日本一の総長は、本当は私を溺愛している。
なんで、そんなに泣きそうなの?



君の手は、



俺の手を離そうとはしないのに。



君の手は、



我慢するように握り締めているのに。



どうして、



離れようとするの?



「どうして?」



彼女がゆっくりとこちらを向く。



涙が溜まった瞳は美しく揺れる。



彼女が髪を揺らして首を振る



「東華」



「お願い。
あなたから、離して」



そうしたら諦めるから。



そう聴こえそうな彼女の声に



ギュッとさらに手を握りしめる。



「嫌だ。」



「悠月」



「こんなにも、こんなにも君が好きなのに
離れれるわけがない。」



額を東華の額へ合わせる。



「悠月」



「ん?」



「好きよ」



「え、」



東華から、その言葉が貰えると思っておらず
動きが止まる。



東華の瞳が目の前に広がる。



緩く狐を描き、



涙を溜めて



瞳の奥に本音を隠して俺を見る。



「悠月。


愛してるわ。


好きよ。大好き。


ホントなら」



そこで東華は言葉を切る。



「そっちだァァァァァァ!!!!」



最後の言葉が、



声の中に隠れる。
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