日本一の総長は、本当は私を溺愛している。
「黙って」



悠月の声を止める。



黒田が首を振っている。



「ねぇ、黒田 康晃お兄様。」



その言葉に黒田の瞳に希望が浮かぶ。



「本能とは、消えないのですね。」



黒田の肩の傷口を抑える。



黒田の口から苦しそうな声が漏れる。



「何度も、何度も、
貴女方を許そうとしたのですよ。


いじめて、虐待して、
仕舞いには、
殺すためだけに妃瀬決定戦へ出され。


こんな事、忘れてしまおうとしたのですよ。


妃瀬 東華となって、
お気持ちを切り替えよう思って。」



腕にこめる力を強くする。



「でも、
東華が許しても、桃華が許さないんです。


桃華の中に刷り込まれている恐怖が、
本能に刷り込まれた妃瀬を裏切るなという
警報を打ち消してしまったんです。


そしてそのせいで、
今、第二人格と、


黒田 桃華の頃の本能が、
混ざってしまったんです。」



黒田が首を振る。



「ごめんなさい。元お兄様。


不出来な妹で。


恐怖も塗り替ええれない、
第二人格で。」



バンバンバン



喉に3発。



貫通するまで打つ。



手は黒田の血で汚れ。



髪は血で束となっている。
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