日本一の総長は、本当は私を溺愛している。
「ほら!検査始まりますよ!!」



「えぇー!お弁当ー!!」



「まーた作ったんですか!」



「今日のは自信作!」



「分かりました。
帰りますよ。」



「えー!
あ、そこの君!お弁当あげる!
自信作だから感想よろしくね!」



「ほら!早く早く!
先生が怒っちゃいますよ!」



「分かったから引っ張らないで!」



そう言われながら彼女が連れていかれる方の
病棟を眺める。



俺とは違う、脳系の病棟。



あ、弁当。



ベンチに視線を戻すと
そこには色とりどりのものが詰められてる弁当。



力を無くしてベンチに座る。



震える手で弁当を取って
箸を取り出す。



1口、



ハンバーグを口に詰める。



和風ソースのそれは、
幾ら他で食べようとも出会ったことの無い味。



たった1度だけしか、
食べられなかった思い出の味。



目の前が歪んで嗚咽が漏れる。



「とう、か。」



次々と口に入れるその弁当の味は、
青春の時の味そのままで、



少しだけ塩が混ざっている。



やっと、



逢えた。



君は、



ここにいた。



ありがとう。



とうか。
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