堕天使
ご飯、味噌汁、ウィンナーと野菜炒め、卵焼きをテーブルに並べる。

樹に料理の出来ない子だと思われたくなかったのではりきりたかったが。お腹もすいていたので簡単なものになってしまった。

「いただきます」

樹は両手を合わせて愛菜に向かって軽く頭をさげた。

こういうところを見るとイイトコロのお坊ちゃんなんだなぁ…と深く感心する愛菜である。

箸の持ち方も食べる姿勢も樹は美しかった。


じっと樹を眺めていると。

樹はいきなり愛菜のほうを見た。

「まぁまぁじゃないですか」

「…まあまあ?」

そう言って口に卵焼きを放り込む樹。

いつも世話になってもらって泊めてもらって助けてもらったのだが。「まぁまぁ」という言葉に愛菜は少しばかりカチンとする。

料理は上京するまでは全く出来ずじまいであった。マコトに好かれたいがために毎日、頑張って得意料理も増えていって。それなりに自信はあった。

…今はそんなことで、カチンとしても仕方ないか。

ご飯を口に入れて。ふぅーとため息が出る。

これから、どうすればいいのか。まだ、目を閉じていたい。現実を受け入れたくもない。

昨日の出来事を思い出すと身体が一気に重くなった。

箸が進まなくなる。
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