堕天使
「どこか行きますか?」

愛菜の深いため息を見かねたのか樹が提案した。

「仕事休みですよね」

「うん…でも」

樹君の予定は? と言おうとしたが声が出ない。

一人になりたくなかった。

もう少し樹の側にいたかった。


食べ終えて食器を洗い終えた後。身支度をして家を出た。

車に乗り込んで愛菜は助手席に座って。車は走り出す。

車内のBGMはまさかのクラシックなミュージック。見た目がアレなんだしヲタ曲でも聴いてそうなのになぁ…と小馬鹿にするように愛菜は樹を見てしまう。


愛菜が黙っていると、樹も一言も喋らない。行き先も教えてもらえずに車はすいすい進んでいく。

愛菜はこれからどうすればいいのだろうと黙って考える。

起床したときから、夢じゃないんだなと自覚しても。やっぱりどうすればいいのかわからなくなる。目的地について今日という日が終わって。家に戻れば。何をすればいいのか。これから何を目標に頑張ればいいのかわからなくなる。昨日の出来事はなかったことにして。またマコトにメールしてしまいそうだ。

「貴女、喜怒哀楽激しいですね」

「へ?」

いきなり樹が話しかけてきたので愛菜は驚く。

「着きましたよ」と樹が車を停めた。
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