堕天使
「じゃあ、ちゃんと言います」

愛菜は樹の顔を見上げる。

「俺はあんたのことが好きだ」

「・・・はぁ?」

ここまできて好きだという同情をもらうくらい自分は憐れなのか。

可哀想なのか。

樹の言葉が日本語には聞こえず、愛菜は高速でまばたきを何回もする。

「それは、ライクで同情なんだよね?」

愛菜の言葉に今度は樹が「はぁ?」という表情をする。

愛菜の頭から手を話して。

はぁーとため息をついた。


「初めて貴女に会ったのはキャンパスでした。一目ぼれだったと思います」

「ヒトメボレ?」

愛菜のオウム返しには触れず樹は海を見る。

「可愛い人がいるなぁって。でも俺は、人は好きになっても恋愛とか正直、したくもなかったし。あんたも見た目だけで中身は駄目だろって思っていたし」

急に敬語からタメ口になり、そして。

ついには「あんた」呼ばわりされる愛菜。

なんで年上なのに「あんた」呼ばわりされなきゃいけないんだ…という思いと共にこの人は一体、何を話しているのかという疑問ばかりだ。
< 22 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop