堕天使
樹はマコトの後輩でもあり子分みたいなところがあった。

簡単に言ってしまえば、いじめっ子といじめられっ子。

ひょろひょろの身体に特徴ある丸い眼鏡をかけた樹と。

小学校から高校まで野球で鍛えたがっちり型のマコトは、国民的アニメで例えるならば、アレとアレですと簡単に言えば誰もが納得するだろうと愛菜は思った。


樹はマコトに何の弱みを握られているのかはわからないが、マコトの無理難題にはよく応える男だった。

一度、マコトに突き飛ばされて頭を打って気絶したときは愛菜を樹が病院にまで連れていってくれた。たいていのマコトの不手際を処理するのが樹の仕事である。


車を10分ほど走らすと樹の住む高級マンションに到着する。

樹は、金持ちのボンボンの一言に尽きる。大学生なのにこんな高級マンションで、一人で暮らしているなんて…と初めて樹のマンションを見たとき愛菜は驚いた。

といっても、マンションの外観を見ただけで部屋に入ったことはない。

「貴女、今回は相当ボッコボコにされましたね」

と腕を持ち上げられて、言われるがまま部屋にまで連れていってもらった。

樹の言う通りボコボコに蹴られたせいなのか、精神的にショックを受けているせいか。
愛菜は一人では歩けなかった。
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