マリンブルーの魔法

人の懐かしい温もりに、波瑠は目を細める。不思議と恐怖は感じなかった。それはきっと、波瑠の心は麻痺してしまっているからだろう。

波瑠が振り向くと、褐色の肌をした可愛らしい女の子が波瑠を抱きしめている。黒く長い髪をポニーテールにし、赤いハイビスカスの花の髪飾りをつけている。赤いリボンの水着を着た女の子は、周りの人が振り向くほどの可愛さだ。

「君もかわいいね！じゃあさ、四人で遊ぼうよ！」

男性二人は嬉しそうに女の子に話しかける。女の子は、「悪いけど……」と波瑠を抱きしめる手に力を入れる。

「I don't like persistent men（しつこい男は嫌いなの）」

そう女の子が言った刹那、波瑠の目の前に水しぶきが飛んだ。波瑠は思わず目を閉じる。



波瑠が次に目を開けると、しつこい男性二人はいなかった。周りにいたはずの観光客たちの姿もない。

波瑠は人が誰もいないビーチにいた。隣にはさっきの女の子が笑っていた。