素直になるまで、少し待って



友達になって、一年。
高校生になって二回目の夏休みを迎えようとしている。


「本当、美桜ってば素直じゃないんだから。これで何回目?」


学校に行ってすぐ、昇降口で親友の柚希がため息交じりに言ってきた。
昨日も葉山君に告白されて、断ったと言ったらこう言われた。


自分でもわかっている。
とうの昔に葉山君のことが好きになっているのに、葉山君の告白を断る馬鹿だって。


「断られる葉山君の身にもなってみなよ」


耳が痛い。
私は柚希の言葉を聞き流して、廊下を歩く。


私だって、自分の気持ちを伝えたい。
だけど、一年も断ったのに、今さら言えない。


「美桜が素直になれたら、それはそれで怖いか」


呆れられていることに変わりはないけど、今度は違うことでため息をつかれた。


「花川さん!」


後ろから元気な声が聞こえてきた。
葉山君は私たちの前に立つ。


「おはよう!」
「……おはよう」


ついさっきまでの会話のせいで、向日葵のように笑う葉山君から目をそらした。


「凌空」


一方的に気まずく、無言になっていたら、誰かが葉山君の名前を呼んだ。
葉山君を呼んだのは私よりも綺麗な子だった。
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