素直になるまで、少し待って
流れるように葉山君の腕に触れる。


「おはよう」


囁くように、小さく動く口に目を奪われる。
同性の私でこれなのだから、異性である男子たちは彼女にくぎ付けだ。


「おはよう、霧崎さん」


それなのに、一切表情が変わらない葉山君。


それを見て、ほっとしている自分がいた。


「教室、行こ?」


霧崎さんはもっと葉山君に腕を絡めた。
見ていられなくて、私は逃げるように教室に入った。


「あれ、花川さん!?」


葉山君の慌てるような声が聞こえて来たけど、私は聞かなかったことにした。


自分の席に着くと、顔を伏せた。


「私に何回も告白してきたのに、あんな美女にいいよられるなんて!私のことが好きなんて、嘘なんだ!騙してたのね!?」


頭の上から聞こえてくる言葉に顔を上げざるを得なかった。


「柚希……」


柚希は前の椅子に座る。


「美桜の考えてることを読んだつもりなんだけど、どう?」
「……そこまでは思ってない」


ただなんとなく、葉山君の魅力に気付いているのは、私だけなんだと思っていた。
葉山君に告白されている私は、ほかの誰よりも葉山君に近い存在なんだと思っていた。
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