素直になるまで、少し待って
「……ごめんね」


葉山君はそのまま教室を出て行ってしまった。


「美桜。チャンスだよ。今ちゃんと葉山君に気持ちを言わなかったら、一生後悔するよ?」


柚希に言われなくても追いかけるつもりだったけど、それは私が葉山君を追いかけるのに背中を一押ししてくれた。


私は葉山君の姿を探す。
だけど、どこにも見当たらない。


「……もしかして」


私はある場所に足を向けた。


「……葉山君」


葉山君はそこで足を抱えて丸まっていた。
私を見た葉山君は、逃げ出そうと立ち上がった。


待って。


たったそれだけなのに、私の口から出てこない。


私は駆け寄り、葉山君の手首を掴んだ。


「……ダメだよ、花川さん。好きでもない、まして好きだと言ってくる男子にこういうことしたら。勘違い、するよ」


告白をするということで頭がいっぱいになって、葉山君の言葉を半分以上理解できていなかった。


柚希の言葉を思い出し、深呼吸をする。


「……葉山凌空、さん。私は……」


そこまで言って言葉が詰まる。
たった二文字が、音にならない。


すると、葉山君に手を離された。
逃げられる。


「花川さん。僕は」
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