素直になるまで、少し待って
空気を読んだのか、葉山君は優しく微笑む。


何度も聞いたフレーズ。
私は慌てて葉山君の口を塞ぐ。


「ちょっと、だけ……待って……」


戸惑う葉山君から手を離す。


「いつも、葉山君が私に伝えてくれる、から……今日は、私が……」


どんどん心臓の音がうるさくなってくる。
深呼吸しても、収まる気配がない。


でも、これ以上待たすことはできない。


「私、は……あなたの、ことが、す……」


たった二文字を言葉にするまで。
素直になるまで。


そのちょっとした勇気が、やっぱり出てこない。


恥ずかしさでずっと葉山君の顔を見ないでいたけど、そのとき、やっと葉山君の表情を見た。


ただ静かに、私の言葉を待ってくれている。


私はもう一度、視線を落とした。
大丈夫だと、自分に言い聞かせる。


「好き、です……」


顔が上げられない。
でも、小さな声だったけど、たしかに言ったのに、葉山君の反応がまったくない。


私は恐る恐る視線を上げる。


葉山君はまっすぐ私を見て、涙を流している。


「本当……?」


私が頷くと、葉山君は私に抱き着いた。


「ありがとう!もう、死にそうなくらい嬉しい!」
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