したたかな恋人
第14話 夫に似ているわ
圭司から貰った左手の指輪を胸に、私は彼との結婚を、着々と進めていた。
今日は、衣装合わせの日だった。
「お客様、お似合いです。」
レースをあしらったフレアスカートタイプのドレス。
豪華だけど、私に合うかな。
「由恵、迷ってるだろう。」
後ろで見ていた圭司が、私の心を読む。
「他の物も着てみれば?フレアタイプじゃなくて、スレンダータイプとか。」
するとお店の人が、花をあしらったドレスを持って来てくれた。
「スレンダータイプですと、こちらが人気ですよ。」
着替えてみると、体にぴったり。
これはダイエット、必須かも。
「フレアスカートとスレンダータイプでお悩みでしたら、マーメイドタイプもありますよ。」
膝までスレンダーで、その下からはフレアになっている、あのタイプだ。
これもダイエットは必要そう。
「クククっ。一生に一度の事なんだから、とことん悩みなよ。」
後ろの席に座っている圭司は、そんな私を笑いながら見ている。
「圭司は、どんなドレスがいいの?」
「俺は、花柄のドレスが由恵に一番似合っていると思うよ。」
「スレンダーか~。」
何キロぐらいダイエットすれば、綺麗に見えるのだろう。
「一日で決められないかも。」
「ええ。何度でもお越しください。」
店員さんは、満面の笑みだ。
「何でしたら、ウエディングダイエットコースもご用意しておりますよ。」
「えっ……」
「ドレスを着る為に、ダイエットコースを選ばれる方は、大変多いんですよ。」
お店の人の迫力が凄かった。
「ええ……一応考えておきます。」
やんわり焦らして、私服に着替えると、圭司が”プッ”と笑った。
「いやあ。ドレス選びが、こんなに面白いモノだったなんて、知らなかったよ。」
「こっちは必死だったのよ?何が似合うか分からないし。」
「自分の好きなドレスを着ればいいんだって。」
「でも圭司は、花柄のドレスがいいんでしょ?」
難しい顔で見つめ合うと、その顔も面白くて笑えた。
「そうだ。俺、ちょっと用事があって、家まで送れないんだ。由恵、一人で帰れる?」
「うん。時間があるから、お茶して帰るわ。」
「分かった。着いたら電話して。」
「はーい。」
私達は交差点で、逆方向に離れた。
「何飲もうかな。」
辺りを見回すと、今流行ってるせいか、タピオカ屋さんが多かった。
「うん。タピオカ飲んで帰ろう。」
私は交差点から少し離れたタピオカ屋さんに入った。
流石に、若い女の子達でにぎわっている。
「うわー。すごい。」
最後列に並ぶと、少しずつ前に進んだ。
「あーあ。これじゃあ、いつ買えるんだろう。」
そう呟いたら、後ろからも同じセリフが聞こえてきた。
「もう。いつになったらタピオカ飲めるの?」
驚いて後ろを振り返ると、その女性は苦笑いしていた。
麦わら帽子が似合う、ワンレンの美女。
それだけで、心惹かれた。
「本当ですよね。これじゃあ、いつになるか分かりませんよね。」
「あなたもそう思う?」
「はい。」
何気に話しかけたその人は、気さくそうだった。
「いつもこのお店に来てるんですか?」
「ううん。今日が初めてなの。」
「私もなんです。」
初めて来たお店で、初めて会う人。
偶然の出会いとは、思えなかった。
「よかったら、一緒に飲みません?」
「はい。」
その人の誘いで、私達はタピオカミルクティーを頼んで、一緒に席についた。
「あっ、美味しい。」
「うんうん。美味しいですね。」
二人でチューチュー、タピオカを飲んだ。
「タピオカって、このトゥルってした感じがいいのよね。」
「分かります。その食感を求めて飲んでるって言うか。」
自然に二人で笑顔になっていた。
「この辺に住んでいる人?」
「いえ。家はもっと遠くです。」
「そうなんだ。私この辺だから、新しいお友達ができたと思っちゃった。この辺はよく来るの?」
「実は、結婚式の衣装合わせに来たんです。」
その人は、目を大きくさせた。
「婚約中なんだ。ねえ、旦那さんになる人は、どんな人?」
「どうって、優しい人です。私を守ってくれる人。」
「きゃあ、素敵。」
その人は、大人びた外見とは裏腹に、乙女チックに喜んだ。
「私は北川妙子って言うの。あなたは?」
「岡由恵です。由恵って呼んで下さい。」
「私もよ。妙子って呼んで。」
妙子さんは新しい友達ができたって言ってたけれど、本当にそう。
会って、ものの4~5分でこんなに親しくなれる人なんていないもの。
「妙子さん、ご結婚は?」
「してるわ。でもまだ子供がいないの。」
「じゃあ、まだ旦那さんとラブラブですね。」
「そんなラブラブだなんて。」
妙子さんは、可愛らしい人だった。
嬉しさや恥ずかしさを、素で表現する人みたい。
「由恵さんは、旦那さんになる人と、ラブラブなの?」
「どうなんですかね。」
「あら。今がラブラブじゃなかったら、後が大変よ?結婚してからなんて、人が変わるんだから。」
「へえ。そうなんですか?」
「私の主人も、結婚する前は、私の事をよく守ってくれたわ。妙子を守る。ずっと一緒にいてくれないかって。」
一瞬、ドキッとした。
同じ事を、圭司にも言われていたから。
「そうなんですかね。」
「ごめんなさい。マリッジブルーにしちゃった?」
「いえいえ。そんなんじゃないです。」
変な私。今日初めて出会った人に、隙を見せるなんて。
「あら。左手の指輪、綺麗ね。」
「ありがとうございます。彼が選んでくれたんです。」
「えっ?そうなの?あまりにも私の婚約指輪に似てるから、びっくりしちゃった。」
「……妙子さんも、同じデザインだったんですか?」
「そうなの。あっ、ごめん。同じデザインってなんか嫌だよね。でも、私も彼に選んでもらったの。これが似合うからって。」
『これなんか、どう?由恵に似合うよ。』
私はタピオカをごくんと飲んだ。
「どうしたの?」
「なんだか妙子さんのご主人、私の婚約者に似ていて……」
「やっぱり?私もそうだと思ってたの。だって由恵さん、私が主人の話をする度に、”私もだ”って顔、するんだもの。」
「ははは。」
気のせいよね。
世の中の男性、皆そんなものよ。
「仕事も同じ会社で、同じ仕事をするパートナーだったりして。」
ドキッとした。
「やだ、本当に?主人もそうだったの。私の仕事のパートナーだったのよ。」
「本当に共通点が沢山ありますね。」
私達は不思議な縁を感じて、連絡先を交換する事になった。
「私、インスタやってるの。由恵さんは?」
「私はTwitterをやってるぐらいで。」
「じゃあ、フォローしておくね。」
私は妙子さんと、そんな風におしゃべりに夢中になっていた。
今日は、衣装合わせの日だった。
「お客様、お似合いです。」
レースをあしらったフレアスカートタイプのドレス。
豪華だけど、私に合うかな。
「由恵、迷ってるだろう。」
後ろで見ていた圭司が、私の心を読む。
「他の物も着てみれば?フレアタイプじゃなくて、スレンダータイプとか。」
するとお店の人が、花をあしらったドレスを持って来てくれた。
「スレンダータイプですと、こちらが人気ですよ。」
着替えてみると、体にぴったり。
これはダイエット、必須かも。
「フレアスカートとスレンダータイプでお悩みでしたら、マーメイドタイプもありますよ。」
膝までスレンダーで、その下からはフレアになっている、あのタイプだ。
これもダイエットは必要そう。
「クククっ。一生に一度の事なんだから、とことん悩みなよ。」
後ろの席に座っている圭司は、そんな私を笑いながら見ている。
「圭司は、どんなドレスがいいの?」
「俺は、花柄のドレスが由恵に一番似合っていると思うよ。」
「スレンダーか~。」
何キロぐらいダイエットすれば、綺麗に見えるのだろう。
「一日で決められないかも。」
「ええ。何度でもお越しください。」
店員さんは、満面の笑みだ。
「何でしたら、ウエディングダイエットコースもご用意しておりますよ。」
「えっ……」
「ドレスを着る為に、ダイエットコースを選ばれる方は、大変多いんですよ。」
お店の人の迫力が凄かった。
「ええ……一応考えておきます。」
やんわり焦らして、私服に着替えると、圭司が”プッ”と笑った。
「いやあ。ドレス選びが、こんなに面白いモノだったなんて、知らなかったよ。」
「こっちは必死だったのよ?何が似合うか分からないし。」
「自分の好きなドレスを着ればいいんだって。」
「でも圭司は、花柄のドレスがいいんでしょ?」
難しい顔で見つめ合うと、その顔も面白くて笑えた。
「そうだ。俺、ちょっと用事があって、家まで送れないんだ。由恵、一人で帰れる?」
「うん。時間があるから、お茶して帰るわ。」
「分かった。着いたら電話して。」
「はーい。」
私達は交差点で、逆方向に離れた。
「何飲もうかな。」
辺りを見回すと、今流行ってるせいか、タピオカ屋さんが多かった。
「うん。タピオカ飲んで帰ろう。」
私は交差点から少し離れたタピオカ屋さんに入った。
流石に、若い女の子達でにぎわっている。
「うわー。すごい。」
最後列に並ぶと、少しずつ前に進んだ。
「あーあ。これじゃあ、いつ買えるんだろう。」
そう呟いたら、後ろからも同じセリフが聞こえてきた。
「もう。いつになったらタピオカ飲めるの?」
驚いて後ろを振り返ると、その女性は苦笑いしていた。
麦わら帽子が似合う、ワンレンの美女。
それだけで、心惹かれた。
「本当ですよね。これじゃあ、いつになるか分かりませんよね。」
「あなたもそう思う?」
「はい。」
何気に話しかけたその人は、気さくそうだった。
「いつもこのお店に来てるんですか?」
「ううん。今日が初めてなの。」
「私もなんです。」
初めて来たお店で、初めて会う人。
偶然の出会いとは、思えなかった。
「よかったら、一緒に飲みません?」
「はい。」
その人の誘いで、私達はタピオカミルクティーを頼んで、一緒に席についた。
「あっ、美味しい。」
「うんうん。美味しいですね。」
二人でチューチュー、タピオカを飲んだ。
「タピオカって、このトゥルってした感じがいいのよね。」
「分かります。その食感を求めて飲んでるって言うか。」
自然に二人で笑顔になっていた。
「この辺に住んでいる人?」
「いえ。家はもっと遠くです。」
「そうなんだ。私この辺だから、新しいお友達ができたと思っちゃった。この辺はよく来るの?」
「実は、結婚式の衣装合わせに来たんです。」
その人は、目を大きくさせた。
「婚約中なんだ。ねえ、旦那さんになる人は、どんな人?」
「どうって、優しい人です。私を守ってくれる人。」
「きゃあ、素敵。」
その人は、大人びた外見とは裏腹に、乙女チックに喜んだ。
「私は北川妙子って言うの。あなたは?」
「岡由恵です。由恵って呼んで下さい。」
「私もよ。妙子って呼んで。」
妙子さんは新しい友達ができたって言ってたけれど、本当にそう。
会って、ものの4~5分でこんなに親しくなれる人なんていないもの。
「妙子さん、ご結婚は?」
「してるわ。でもまだ子供がいないの。」
「じゃあ、まだ旦那さんとラブラブですね。」
「そんなラブラブだなんて。」
妙子さんは、可愛らしい人だった。
嬉しさや恥ずかしさを、素で表現する人みたい。
「由恵さんは、旦那さんになる人と、ラブラブなの?」
「どうなんですかね。」
「あら。今がラブラブじゃなかったら、後が大変よ?結婚してからなんて、人が変わるんだから。」
「へえ。そうなんですか?」
「私の主人も、結婚する前は、私の事をよく守ってくれたわ。妙子を守る。ずっと一緒にいてくれないかって。」
一瞬、ドキッとした。
同じ事を、圭司にも言われていたから。
「そうなんですかね。」
「ごめんなさい。マリッジブルーにしちゃった?」
「いえいえ。そんなんじゃないです。」
変な私。今日初めて出会った人に、隙を見せるなんて。
「あら。左手の指輪、綺麗ね。」
「ありがとうございます。彼が選んでくれたんです。」
「えっ?そうなの?あまりにも私の婚約指輪に似てるから、びっくりしちゃった。」
「……妙子さんも、同じデザインだったんですか?」
「そうなの。あっ、ごめん。同じデザインってなんか嫌だよね。でも、私も彼に選んでもらったの。これが似合うからって。」
『これなんか、どう?由恵に似合うよ。』
私はタピオカをごくんと飲んだ。
「どうしたの?」
「なんだか妙子さんのご主人、私の婚約者に似ていて……」
「やっぱり?私もそうだと思ってたの。だって由恵さん、私が主人の話をする度に、”私もだ”って顔、するんだもの。」
「ははは。」
気のせいよね。
世の中の男性、皆そんなものよ。
「仕事も同じ会社で、同じ仕事をするパートナーだったりして。」
ドキッとした。
「やだ、本当に?主人もそうだったの。私の仕事のパートナーだったのよ。」
「本当に共通点が沢山ありますね。」
私達は不思議な縁を感じて、連絡先を交換する事になった。
「私、インスタやってるの。由恵さんは?」
「私はTwitterをやってるぐらいで。」
「じゃあ、フォローしておくね。」
私は妙子さんと、そんな風におしゃべりに夢中になっていた。