したたかな恋人
第9話 いつかしよう
会議室を出て、パウダールームに行った。
「うん。化粧OK。」
準備万端に、パウダールームを抜け、オフィスに戻ろうとした。
その時、腕を捕まえられた。
「大丈夫だったか?」
「杉浦君。」
杉浦君は周りを見回した。
「奥田課長と何を話していた?」
「……知ってたの?」
「偶然見たんだ。」
心配そうな顔をして、杉浦君は私を見ている。
「……別れ話をしていたの。」
「えっ……」
私はニコッと、笑顔を見せた。
「杉浦君と幸せになりたいから、別れて下さいって。」
「それで?奥田課長は?」
「うん。それで私が幸せになれるなら、身を引くって。」
杉浦君の表情が、明るくなる。
「よかった。」
「杉浦く……」
「よかった。由恵が、俺を選んでくれて。」
涙を浮かべる杉浦君を、ぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう。そう言って貰えると、私も嬉しいわ。」
杉浦君と見つめ合うと、私達は顔を近づけ、唇を合わせた。
「今夜、由恵の部屋に行くよ。」
「うん。」
約束を交わすと、私達はそれぞれに仕事に戻った。
「岡さん。これ企画書できたので、見て貰えますか?」
「ええ。」
明日実ちゃんの書いた企画書を読むと、私の考えたコンセプトと、彼女が考えたコンセプト、混じり合っていてとてもよい出来だった。
「すごくいい出来だわ。このまま計画書に進んでちょうだい。」
「うわわっ。私、計画書なんて書いた事ないですよ。」
明日実ちゃんは、慌てていた。
「頑張って書いてみましょう。いつかは書かなきゃいけないんだから。」
「よし。岡さん。私、書いてみますね。」
「その意気!」
すっかり前向きになった明日実ちゃんを見て、今まで彼女に関わった時間が、間違えじゃない事を知った。
きっと将成さんと関わった時間もそう。
関係は、間違っていたかもしれないけれど、一緒に過ごした時は、私にとっていい思い出になって、輝くはず。
だとしたら、将成さんには感謝しかない。
「岡さん?」
「ん?ううん。何でもない。」
明日実ちゃんに笑顔で手を振り、正面を向いた。
「今日楽しみですね。」
隣の席の杉浦君が、小さな声で囁いた。
「うん。」
今まであんなに迷惑だったのに、付き合うとなった途端、幸せな一時になる。
恋ってなんて、身勝手なのだろう。
しかも、同僚との恋愛。
社会人になって、初めての恋愛が将成さんとの不倫だったから、普通の社内恋愛って、初めて。
それも私にとっては、楽しみの一つだった。
そしてその日の夜。
食事を終えて、杉浦君を家に招いた。
どちらからともなく服を脱いで、ベッドに横になった。
「あぁ……あぁ……」
「気持ちいい?」
「気持ちいい……」
すると杉浦君の手が下に行き、私の中に入ってきた。
「は……あっ……」
「可愛いよ、由恵。」
敏感なところまで指は這って行き、もっと気持ちが昂る。
「由恵……」
「杉浦君……」
キスしながら、杉浦君は私の中に入ってきた。
「はぁっ……あっ……」
「由恵。俺を選んでくれて……ありがとう……」
「ううん。杉浦君こそ、私でいいの?」
「いいに決まってるだろう。由恵じゃなきゃ、ダメなんだ。」
「んっ……んんっ……」
気持ち良さが倍増する。
「名前で呼んで……由恵……」
「け、圭司っ……」
名前を呼ぶとより激しくなる。
初めて圭司に抱かれた日の事を、思い出す。
「はぁ……はぁ……」
あの時は、私を将成さんから奪う為の激しさだったけれど、今は私に欲情して激しくなっている。
「由恵……俺は……由恵を放さない。だから由恵もっ、俺を放さないでくれっ……」
「うん……放さない……」
敏感なところが、ビクンっと波打つ。
「あっ……いっ……あっ―――――――っ!」
お互いはぁはぁと息をしながら、キスをした。
「由恵、由恵。」
「圭司……」
私の上でクタッと倒れる圭司を見て、色っぽく感じた。
この人と、これからたくさんの時間を愛に変えていく。
その事に、迷いなどなかった。
翌日は、圭司と一緒にお昼を食べに行った。
「何を食べよう。」
「こっちに美味しいサンドイッチ屋さんがあるよ。」
将成さんとは、公に外に出歩くなんて、できなかった。
それも切なくて、時には酔ったりしてよかったんだけど、やっぱり好きな人とは、一緒に歩きたい。
「うん。そこにしよう。」
「うん。」
二人でお店に入ると、中はファミリーで混んでいた。
偶然隣に座った人達が、赤ちゃんを連れていた。
お母さんの視線を遮って、圭司は赤ちゃんに変顔をしていた。
きゃっきゃっと赤ちゃんの嬉しそうな顔が見える。
「圭司、子供好きなの?」
「ああ、そうだな。早く欲しいと思うよ。」
私はちょっと赤くなった。
圭司との赤ちゃん。
そんな日もくるのかな。
「なに、赤くなってるの?」
圭司が顔を覗いてきた。
「もしかして、俺達の赤ちゃんを想像してた?」
図星をつかれ、余計顔が赤くなった。
「早く見たいな。俺達の赤ちゃん。」
「……うん。」
将来の見える人。
待っていた未来が、圭司となら叶う気がした。
「その前に、由恵の花嫁姿を見なきゃな。」
何気に言った圭司の言葉が、胸にじわっときた。
「やだ、結婚する気満々?」
「結婚しなきゃ、赤ちゃんは見れないだろ?」
「なに?そんなに赤ちゃん欲しいの?」
すると圭司は、私の手を握った。
「由恵との家族が欲しいんだよ。」
嬉しくて、涙が出て来た。
「泣き虫。」
「だって。」
圭司は私の手の甲にキスをした。
「いつか、本当に結婚しよう。その相手は、由恵しかいないと思っている。」
「私も……圭司しかいない。」
私達は、お互いの未来を確かめ合った。
「うん。化粧OK。」
準備万端に、パウダールームを抜け、オフィスに戻ろうとした。
その時、腕を捕まえられた。
「大丈夫だったか?」
「杉浦君。」
杉浦君は周りを見回した。
「奥田課長と何を話していた?」
「……知ってたの?」
「偶然見たんだ。」
心配そうな顔をして、杉浦君は私を見ている。
「……別れ話をしていたの。」
「えっ……」
私はニコッと、笑顔を見せた。
「杉浦君と幸せになりたいから、別れて下さいって。」
「それで?奥田課長は?」
「うん。それで私が幸せになれるなら、身を引くって。」
杉浦君の表情が、明るくなる。
「よかった。」
「杉浦く……」
「よかった。由恵が、俺を選んでくれて。」
涙を浮かべる杉浦君を、ぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう。そう言って貰えると、私も嬉しいわ。」
杉浦君と見つめ合うと、私達は顔を近づけ、唇を合わせた。
「今夜、由恵の部屋に行くよ。」
「うん。」
約束を交わすと、私達はそれぞれに仕事に戻った。
「岡さん。これ企画書できたので、見て貰えますか?」
「ええ。」
明日実ちゃんの書いた企画書を読むと、私の考えたコンセプトと、彼女が考えたコンセプト、混じり合っていてとてもよい出来だった。
「すごくいい出来だわ。このまま計画書に進んでちょうだい。」
「うわわっ。私、計画書なんて書いた事ないですよ。」
明日実ちゃんは、慌てていた。
「頑張って書いてみましょう。いつかは書かなきゃいけないんだから。」
「よし。岡さん。私、書いてみますね。」
「その意気!」
すっかり前向きになった明日実ちゃんを見て、今まで彼女に関わった時間が、間違えじゃない事を知った。
きっと将成さんと関わった時間もそう。
関係は、間違っていたかもしれないけれど、一緒に過ごした時は、私にとっていい思い出になって、輝くはず。
だとしたら、将成さんには感謝しかない。
「岡さん?」
「ん?ううん。何でもない。」
明日実ちゃんに笑顔で手を振り、正面を向いた。
「今日楽しみですね。」
隣の席の杉浦君が、小さな声で囁いた。
「うん。」
今まであんなに迷惑だったのに、付き合うとなった途端、幸せな一時になる。
恋ってなんて、身勝手なのだろう。
しかも、同僚との恋愛。
社会人になって、初めての恋愛が将成さんとの不倫だったから、普通の社内恋愛って、初めて。
それも私にとっては、楽しみの一つだった。
そしてその日の夜。
食事を終えて、杉浦君を家に招いた。
どちらからともなく服を脱いで、ベッドに横になった。
「あぁ……あぁ……」
「気持ちいい?」
「気持ちいい……」
すると杉浦君の手が下に行き、私の中に入ってきた。
「は……あっ……」
「可愛いよ、由恵。」
敏感なところまで指は這って行き、もっと気持ちが昂る。
「由恵……」
「杉浦君……」
キスしながら、杉浦君は私の中に入ってきた。
「はぁっ……あっ……」
「由恵。俺を選んでくれて……ありがとう……」
「ううん。杉浦君こそ、私でいいの?」
「いいに決まってるだろう。由恵じゃなきゃ、ダメなんだ。」
「んっ……んんっ……」
気持ち良さが倍増する。
「名前で呼んで……由恵……」
「け、圭司っ……」
名前を呼ぶとより激しくなる。
初めて圭司に抱かれた日の事を、思い出す。
「はぁ……はぁ……」
あの時は、私を将成さんから奪う為の激しさだったけれど、今は私に欲情して激しくなっている。
「由恵……俺は……由恵を放さない。だから由恵もっ、俺を放さないでくれっ……」
「うん……放さない……」
敏感なところが、ビクンっと波打つ。
「あっ……いっ……あっ―――――――っ!」
お互いはぁはぁと息をしながら、キスをした。
「由恵、由恵。」
「圭司……」
私の上でクタッと倒れる圭司を見て、色っぽく感じた。
この人と、これからたくさんの時間を愛に変えていく。
その事に、迷いなどなかった。
翌日は、圭司と一緒にお昼を食べに行った。
「何を食べよう。」
「こっちに美味しいサンドイッチ屋さんがあるよ。」
将成さんとは、公に外に出歩くなんて、できなかった。
それも切なくて、時には酔ったりしてよかったんだけど、やっぱり好きな人とは、一緒に歩きたい。
「うん。そこにしよう。」
「うん。」
二人でお店に入ると、中はファミリーで混んでいた。
偶然隣に座った人達が、赤ちゃんを連れていた。
お母さんの視線を遮って、圭司は赤ちゃんに変顔をしていた。
きゃっきゃっと赤ちゃんの嬉しそうな顔が見える。
「圭司、子供好きなの?」
「ああ、そうだな。早く欲しいと思うよ。」
私はちょっと赤くなった。
圭司との赤ちゃん。
そんな日もくるのかな。
「なに、赤くなってるの?」
圭司が顔を覗いてきた。
「もしかして、俺達の赤ちゃんを想像してた?」
図星をつかれ、余計顔が赤くなった。
「早く見たいな。俺達の赤ちゃん。」
「……うん。」
将来の見える人。
待っていた未来が、圭司となら叶う気がした。
「その前に、由恵の花嫁姿を見なきゃな。」
何気に言った圭司の言葉が、胸にじわっときた。
「やだ、結婚する気満々?」
「結婚しなきゃ、赤ちゃんは見れないだろ?」
「なに?そんなに赤ちゃん欲しいの?」
すると圭司は、私の手を握った。
「由恵との家族が欲しいんだよ。」
嬉しくて、涙が出て来た。
「泣き虫。」
「だって。」
圭司は私の手の甲にキスをした。
「いつか、本当に結婚しよう。その相手は、由恵しかいないと思っている。」
「私も……圭司しかいない。」
私達は、お互いの未来を確かめ合った。