冬 -Domestic Violence-


“ガチャリ”


「・・・ただいま。」

誰もいない真っ暗な部屋に帰ってきても、
いまだに“ただいま”と言ってしまう。



カレと別れてから1度引っ越し、

就職して、お金に余裕が出来てきた頃に少し家賃が高い今の部屋に引っ越してきた。


1人では少し広い1LDKも、ポッカリ空いた私の心そのままのようで良かった。



鞄を置いて洗面台へ向かうと、

先にお風呂のスイッチを入れてから鏡に映った自分を見る。


「クルミも結婚か・・・。」


クルミが会う度にキレイになっていく様子を見て、

羨ましいと思わなかったと言えば嘘になる。


25歳を迎えて、
私達の間に一気に結婚ラッシュが訪れた。


世間で言われる第一次結婚ラッシュに乗ったみんながそれぞれの幸せを手に入れて・・

みんなは決してそんなこと思っていないだろうけど、

私1人が“取り残されている”
って言われても仕方がない。


鏡に映るもう何年も薄メイクしかしていない自分の顔は、

年々表情少なくなってきていた。


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