冬 -Domestic Violence-
ヒデさんから何を聞かされてるのか分からないが、
見る見るうちにチャラ男の表情から“反省”と“後悔”が溢れ出て・・
今にも泣きそうな顔を見せる。
そんな様子を尻目に・・
中野の前に俺も胡座をかいた。
「挨拶が遅れたけど、
警視庁の神野です。」
「はい・・・。」
「小泉に話した事を俺にも教えて欲しい。」
「・・・・・・・・・。」
「部屋に帰ってシオリの死体を見つけた後、
あんたはどうしたんだ?」
「・・・・・すぐに駆け寄って・・。
何が起きたのか・・・なんで・・
どうして・・って・・ずっと・・。」
「通報もしないでその場から逃げたのは何でだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「大丈夫だよ中野。
俺は別に責めてるわけじゃない。
DVを受ける日々の中、あんたの精神状態も相当不安定だったはずだ。
だからどんな行動を取っても不思議じゃない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「シオリの手に・・・いつも・・いつもつけてた日記帳が握られてました・・。」
「・・・・・・・・・。」
「何を書いていたのかは知らなかったけど・・でもきっと・・DVの事も・・。」
「・・・・・・・・・。」
「取ろうと思ったけど・・
相当固く握られてて・・・。」
「死後硬直が始まってたからだろうな。」
「シオリのDVを認めるのも・・
それを原因に俺が殺したと思われるのも・・怖くなって・・・
・・本当にごめんなさい・・・。」
「・・中野さ。これは俺と、
俺の上司の推測だけど・・。」
「・・・・・・・。」
「あんたはただDV被害に苦しんでたというより・・
なんとかしてシオリを救いたい一心だったんじゃないのか?」
「・・・・・・・・はい・・・。」
「殴られても、せっかく作った料理を床にぶちまけられても、強引に性交渉を迫られても。」
「・・・・・・・。」
「シオリの強迫性障害に・・
あんたも気付いてたんだな?」
「・・・・明日こそ・・一緒に病院に行こうって・・・説得を続けてました・・。」