冬 -Domestic Violence-
「いやぁマジで、ももクロ越えてたよ!
クルミちゃんの友達ってみんな可愛いんだなぁ。」
「・・すみません、通してください。」
「ちょっとちょっと。
せっかくだから向こう行って話そうよ!」
「・・すみません、急いでるので。」
クルミの旦那さんのお友達だと思われるその顔は真っ赤で、目は少し虚ろになっている。
酔いが回ったテンションそのままに任せているのか、なかなか解放してくれない。
「あのホントにどいてください。」
「イヤだね~。じゃあLINE教えてよ。」
「・・・・・・・。」
絶対に嫌だったけど・・
この場が切り抜けられるんだったら私のIDぐらい別にいっか・・。
早くお水を飲ませないとサヤカが脱水症状になっちゃう。
少し覚悟を決めて邪魔男さんの目を見た。
「・・・・・分かり・・。」
「おい。」
・・・・・・・??
“分かりました”と答えようと思った所で、
立ち塞がっていたその人の肩が掴まれ、
一気に後ろへ引っ張られた。
「困ってるみたいだからやめろよ。」
「おっマサ~!
この子、さっきの“水色”の子だぞ!」
「分かった分かった。それより、“緑”の子がお前の事探してたよ。」
「マジ!?そりゃ行くっきゃねぇべ!」
私の事なんてもう過去だったかのように、邪魔男さんがまたどこかへ駆けだしていった。
助けてくれたこの人もお友達・・かな・・?
「あの・・ありがとうございます。」
「ごめんね。
あいつすぐ悪酔いするから。」
ようやく空いた通路。
バーテンダーのお兄さんからお水を貰った後、サヤカが待つトイレへと再び戻った。