冬 -Domestic Violence-
「シオリはたまに何考えてんのか分からない時があるんだよ。」
別れ際にカレから言われたのは、
今まで聞いたこともない私への不満。
散々浮気を繰り返して、
最終的には“他に好きな子が出来た”と私に背中を向けたカレの口からは、
3年8ヶ月の歳月なんてまるで無かったかのようなセリフが溢れた。
「今何考えてるか分かる?」
「俺の事最低だと思ってるんだろ。」
「ううん。」
「・・なんだよ?」
「男の人って気持ち悪い。」
「・・・・・・・・。」
お決まりの言い訳を口にすることなく、
駅のホームへと昇っていくカレを見ながら、私の中で何かが壊れた気がした。
テスト勉強もそっちのけで何度も手紙を書き直していた1ヶ月記念日も・・
お母さんに文句を言われながらキッチンを占領していた2月13日も・・
何気ない言葉にも、仕草にも、視線にも喜びを感じていたあの時の私の心は、
黒くて深い闇に包まれながら大事に奥底にしまわれた。