冬 -Domestic Violence-
「・・・・・・お友達、大丈夫?」
「・・・・・?」
「あ、俺も同じで介抱者だから。」
“マサ~!!もう俺死ぬ~!!”
その人がトイレの扉を指さしたと同時に、
中からさっきの邪魔男さんの悲痛な声が聞こえてきた。
「死なねぇよ。お前はいつも大げさだな。」
「・・・・・・・・フフッ。」
ついさっき私が言った台詞と同じ言葉を口にしたのが面白くて、思わず笑ってしまった。
だから・・慌てて両手で口元を隠す。
「・・?・・・・どうしたの?あんな悪酔い野郎、もっと笑って大丈夫だよ。」
「いや・・そうじゃなくて・・。」
「あ、披露宴の余興、
すっごいカッコ良かったよ。」
「・・ありがとうございます。」
「ももクロの事よく分かんないけど、
あんだけカッコいいんなら今度YouTube見てみようかな。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・名前・・・
聞いてもいいかな・・?」
「“行くぜっ!怪盗少女”です。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・?」
「・・・ごめん、曲名じゃなくて、
君の名前を聞こうと思って・・。」
「!!!?」
「・・フッ・・アハハハ!
そんな恥ずかしがらないでよ。
ごめん、俺の聞き方が悪かった。」
「・・・・上原です。」
「上原さんか。
俺、中野って言います。」
「・・・・・・・・・。」
「じゃあせっかく教えて貰ったことだし・・・さっそく・・。」
「あの・・ごめんなさい、初対面の人とすぐにLINEの交換はちょっと・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・?」
「・・ごめん、YouTubeで“行くぜっ!怪盗少女”を検索しようと思って・・。」
「!!!?」
「・・アハハハ!だからそんな恥ずかしがらないで大丈夫だよ。
ごめん、紛らわしくスマホ出した俺が悪かった。」
「・・・・・。」