冬 -Domestic Violence-
「ハルカさん、聞いてくださいよ。
来る途中、通学途中の小学生の団体がいたんだけど、
なんかみんなでダジャレ言い合ってたんですよ。」
「・・・・・・。」
「布団が吹っ飛んだとか、
チーターが池に落っこちーたーとか言って盛り上がってたんだけど、
その中の一人が、“ロシアの殺し屋は恐ろしや”って言い出した途端、
シーーーンってなって。
オレも思わず、いや全くダジャレになってねぇ~って思いながらすれ違ったんすよ。」
「成田。」
「・・?はい。」
「・・・いい加減、
名前で呼ぶのやめてくれる?」
今日もちょっと笑えるオレの小話は不発に終わったか・・。
コンビを組んで以来続けている日課も、
いつもの冷たい視線で一蹴される。
小泉ハルカ先輩。
不機嫌と怒りは露骨に態度に出るくせに、
絶対に笑わない事から、
みんな陰で“鉄仮面ハルカ”と呼んでいた。
まったく・・勿体なさ過ぎるぜ・・。
今まで何百、何千の女の子を見てきたオレは分かる。
この人は・・笑えば絶対に可愛い。
何もしてなくてもクールビューティー的な雰囲気は醸し出してるし、
怒った時は“ゾゾゾッ”っていう・・Mなエロオヤジは逆に喜ぶ威圧感も発するが・・
ハルカさんとコンビを組んで幾つもの捜査をしていく中、
オレは一発この人を笑わせてやろうと躍起になっていた。