冬 -Domestic Violence-
――――――
「上原さーん!助けてください!!」
「はい。」
後輩のリエが私を呼んだのは、
もうすぐ終業時間になる頃だった。
「もう解読不明です!!」
リエの席まで行くと、彼女はパソコンの画面を見せてきてお手上げのボーズを取った。
画面に映る社内メールの受信ボックスには、
ドイツ支社に勤める現地スタッフからのメールが表示されている。
「・・・・・・・・お客さんから急な追加発注が来て在庫が足りないそうです。
すぐに製造の牛島課長にこのメールを転送してください。」
「はーい!いつもありがとうございます。」
リエはキーボードを私の方に少し動かして、いつもの笑顔を振りまく。
“代わりに返信して下さい”という彼女からの無言のメッセージを受け取り、
ドイツスタッフへの返信を打ち始めた。