冬 -Domestic Violence-
「おーハルカ-。イチロー。
相変わらず仲良いなお前達。」
「・・・いい加減、
名前で呼ぶのやめて頂けますか?」
中腰から立ち上がって洗面所へ向かおうとすると、
作業をしていた鑑識班の“長さん”こと長野先輩がこちらへ向かってきた。
なんでもこの人・・父、母、兄、弟。
一家まるまる警察官で・・
しかもみんなそれぞれ勤務する全国の各警察署の、鑑識班に所属しているらしい。
そんな鑑識一族のサラブレッドの片手にはまた新たな遺留品・・?
鑑識袋に入れられていたのは、
一冊の大学ノートだった。
「長さん、なんですかそれ?」
「死体発見時、これが被害者の手に握られてた。
指紋は採り終わったから好きに見ていいぞい。」
長さんからハルカさんにそれが渡ると、早速ペラペラとめくったのでオレも横から覗く。
「握られてたって事は、殺される直前までこれを見てたんすかね?」
「・・・・・・・・。」
「これは・・・日記帳っすか?」
「・・・・・・・・・・・。」
「珍しいっすね。
今どきブログとかツイッターじゃなくて、
こんなノートに書いてるなんて。」
「見てたんじゃなくて、
書いてたんじゃない?」
「・・・・・?
あ、ちょっとハルカさん?」