冬 -Domestic Violence-
「じゃあ・・そんなあんたにとって、
柏原が起こした事件は相当、
心にくるもんがあったのかもな。」
「柏原のニュースを目にする度にあの時の・・
中学生だった自分の叫び声が、
ずっと耳の中でこだまし続けて、
ずっと胸が苦しかったです。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「柏原が逃亡を図ったビルから転落死して数ヶ月が経った頃、
ある噂がオオスカワ署に伝わってきました。
信憑性は分からないけど、
警察内部で出回っていた噂です。」
「・・・・・どんな?」
「“柏原は事故死じゃない。アイツをあのビルまで追い詰めた刑事が殺した”。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「その噂は本当ですか?」
「・・・・・・それを確かめて、
あんたはどうするつもりだ?」
「その刑事さんにお礼が言いたいです。」
「・・・・・・・・・。」
「【ありがとうございます】
と伝えたいです。
同じ女性として、同じ刑事として、
・・同じ・・被害者として・・・。」
「・・今は1課じゃないとはいえ、悪いが容易くあの時の捜査内容は公言できない。
だからあんたの質問には“Yes”とも“No”とも言えない。」
「そうですか・・。」
「・・・もう14時だ。
大将さんの店に行こう。」
「・・はい。」
第6章 完