濡れた月
それから長く経って知ったが、
父さんはアイツとの裁判を起こそうとしていたらしい。


裁判はあの日の四日後だった。



俺は何も出来なかった。

無力だった。

父さんも、母さんも、弟も。

誰も助けられなかった。



俺は誰もいなくなってしまった家の前で、泣きじゃくった。

前日の雨のせいで濡れていた地面が、酷く熱く感じた。

火で炙られた直後のように熱く感じた。


一通り泣いて、そして決めた。

俺はアイツを地獄に落とす。

そのために、俺は生き残ったんだ。


身体中の血液が沸騰する感じ。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop