間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんが何とか嘘を繕ってその場を逃れようとするが、梅子さんの鋭い眼孔からは逃げ切れない。
「間宮の人間になるのであれば割り切るべきです。それとも、今すぐ結婚したくない理由でも?」
「会社に話を通してある俺と違って飛鳥はまだ仕事の引き継ぎが出来ていない。今大きな仕事を任された後でチームを抜けるのも周りに迷惑がかかる」
間宮さん、さっきから流れるようにそれらしい理由で梅子さんを説得させようとすると凄いなぁ。って、感心している場合じゃない。
彼の言葉にうんうんと頷いて強く賛同を示すが、梅子さんには効果がない様子。
「そうですか、ならば会社は仕事が落ち着くまで待ちましょう。ですが籍を入れるくらいは直ぐに出来ます。何故そんなに拒むのですか?」
「……」
「まさか、私たちに何か隠している……などではないですよね?」
事実婚にすればお互いの籍に傷が付くこともない。それを条件に私は間宮さんとの偽装結婚の話を受けた。
しかしこのままでは偽装結婚していたことがバレて、間宮さんの家での立場が圧倒的に悪くなる。
再度間宮さんの表情を確認する。すると彼は一瞬だけ私の方を向くと意を決したように口を開いた。
「悪い、実は……」
彼の口がそう発した瞬間、私は万年筆を掴むと婚姻届にペンを走らせていた。
「っ……飛鳥!?」
「……、」