間宮さんのニセ花嫁【完】
「っ……飛鳥!?」
「……、」
自分の名前を記入すると体を起こし、そして姿勢を正して梅子さんを見据える。
「これで……よろしいでしょうか」
婚姻届にはしっかりと私の名前が書き込まれている。サインした手が震えていたが、それでも構わず筆を走らせた。抑えきれない衝動が私を駆り立てた。
「飛鳥さんはサインしましたよ?」
「……」
梅子さんに視線を向けられた間宮さんの表情は硬い。しかし暫くして腕を伸ばすとペンを掴み、そしてそっと婚姻届に手を添えた、
間宮さんが自分の名前を刻み込むのを隣で見守っていた。彼がペンから手を離す。婚姻届には私と間宮さん、二人名前の名前が書き込まれている。
「よろしいでしょう。これは私が預からせていただきます。千景は間宮家の跡取りという自覚を持ってこれからも精進するように」
梅子さんの部屋を追い出された私たちは暫くして周りに人がいないことを確認するとお互いに顔を見合わせた。
「ど、どうしましょうか」
「どうして名前を書いた?」
「え?」
「籍は入れない、そういう話だっただろう」