間宮さんのニセ花嫁【完】
「あ、間宮さんおはよーっす」
「っ……」
柳下くんの声で後ろを振り返るとどうやら間宮さんが出社してきたようだ。それぞれが挨拶をする中、私はなかなか直接顔を確認出来なかった。
まだ怒ってるかな、そんな心配をする中で弥生が耳打ちをする。
「間宮さん、何を食べたらあんなに爽やかに出社出来るんだ?」
「さ、さぁ?」
「あ、今日の飲み会間宮さんも誘ってみる?」
「え、」
ちょっと待って!と引き止める前に弥生が席に着いた間宮さんの元へと向かう。こういう時ばかり行動が早いんだから。
いや、間宮さんが来ても問題はないのだが今は少し気まずいというか。そんな私の気も知らずに飲み会に誘われた間宮さんは缶コーヒー片手に残念そうに顔を顰めた。
「参加したいのは山々なんだが夕方から打ち合わせがあってな。いつ終わるかも分からないから遠慮しておくよ」
間宮さんの返事にホッとしたのと同時に何故か胸が締め付けられるような想いをした。仕事だと言っていたし、私を避けて言ったわけじゃないはずなのに。
「残念、まぁ間宮さんが来たら関係ない人も付いてきそうだし」
複雑そうに呟きながら戻ってくる弥生に「そうだよー」と在り来たりに返す。
間宮さんがするはずない、そう分かっていても騒つく心に気付かずにはいられない。
前向きに、と心を取り繕うとポケットに入れたままだったスマホが震える。視線の先にいる間宮さんからのLINEのメッセージだった。
【昼休み話せるか? 屋上で待ってる】
顔を上げるとあの日とは違う、上司の顔の間宮さんの目が合った。