間宮さんのニセ花嫁【完】



しかし驚くのはまだ早かった。


「ご予約の間宮様ですね、お待ちしておりました。個室へご案内させていただきます」

「え、個室?」


仰々しい門構えのレストランの受付で間宮さんが名前をスタッフの方に伝えると聞こえてきた単語に首を傾げる。
するとあっという間にガラス窓から綺麗な夜景が望める個室の席へ案内され、薄いメニューを手渡された。

スタッフの方が部屋を後にすると戸惑いながらも「わぁ」と、


「す、凄く綺麗なお部屋〜。夜景の眺めも最高〜」

「うん、佐々本も気にいると思って」


いやいや、この空気に流されちゃ駄目だ。


「ま、間宮さん!? これは一体どういうことですか!? なんで私こんな高そうなお店に連れてこられてるんでしょうか!」


色々と疑問はあるがまずはそれだ。私が質問をぶつけるとメニューに注がれていた彼の視線がこちらに向いた。
間宮さんレベルになるとこんな高級レストランの背景にすら埋もれないんだな。


「いつも佐々本は仕事頑張ってくれてるからそのご褒美だよ」

「ご、ご褒美って」

「ほら、今日は好きなもの食べてくれていいから」


彼はそう微笑んでくれたけれど、この雰囲気といいお店といい、嫌でも弥生の言葉が頭を過る。


『どうすんの、告白なんてされたら』


まさか、ね。だけど確かに私が彼氏に振られたタイミングなわけだし。


「(でもどれだけの美女に告白されても振り向かなかった間宮さんが何故私に?)」


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