間宮さんのニセ花嫁【完】
「飛鳥、まだ怒ってんの? だから謝っただろ」
「っ、謝ってないよ」
「は?」
怒りなのか、恐怖なのか、それとも別の感情なのか。私の声は震えているように聞こえた。
「謝られてない、一度も! 浮気されて私がどんな気持ちだったかも知らないで!」
「……だから、あれは向こうから誘ってきたことで。つーか俺が浮気したって証拠あんの?」
「っ……」
私との約束を破った日、他の女と腕を組んで歩いていた。それすらも彼の中では浮気には入らないというのか。
珍しく折れようとしない私に痺れを切らしたのか、彼は苛ついた手付きで自分の頭を掻く。
「このままじゃ拉致明かない。取り敢えず早く部屋入れて」
「(駄目だ、このまま家を連れていったら……)」
想像出来る展開に私は首を横に振る。
と、
「あ? お前誰」
恐怖で目を瞑っていた私は聡の声で反対の手を誰かに掴まれていることに気が付いた。