間宮さんのニセ花嫁【完】
「本当にいいのか?」
予想外の答えだったのか、間宮さんは再度私に意思を確認する。そんな彼に私はこの数日の間に思ったことを素直に口にした。
「私、自分が我慢すればそれで全てが解決すると思っている間宮さんが嫌いです!」
その言葉に間宮さんは大きく目を見開いた。
「今までは間宮さんのこと、完璧な人だと思っていました。理想の上司で、尊敬していました」
「……」
「でもその裏側は不器用で、自己犠牲が激しくて、可哀想な人だって。私気付いたんです」
家を継ぐことも彼はそうすることで幸せになる人がいると言っていた。その通り紗枝さんと正志さんには感謝された。聡のことだって間宮さんのお陰で大事にはならなかった。
私が婚約届けに名前を書いたとき、自分を安売りするなと怒ってくれて嬉しかった。
それなのに、彼はそんな自分のことを安売りする。
「自分は傷付いても大丈夫、なんて考えをしている人を私は放っておけません」
「っ……」
「……契約の期限が切れるまで、間宮さんに知って欲しいんです。それは間違いだって」
知らないふりをして、気付かないふりをして、間違いを続けてしまうとどうなってしまうのか。それを私は聡で嫌という程知ったから。