間宮さんのニセ花嫁【完】
「ここまで来たからには最後までやり遂げます。女に二言はありません!」
「……更に人を騙すことになってもか?」
「それを巻き込んだ間宮さんが言うんですか?」
責め立てるように返せば彼が「いや」と勢いに負けたように言葉を濁した。
ここまで家族や友人、間宮さんの大切な人たちまで嘘をついてしまっている。ここで種明かしをしたら、間違いなくその人たちを傷付ける。
初めから私たちは間違っていたのかもしれない。だけどこの道を選んだ以上、引き返すことは出来ない。
「しかし本当にいいのか? 俺と結婚なんて」
「っ……というか!」
私は煮え切らない彼にズイッと身体を近付けた。
「間宮さんこそ! 何度もそう言って確認してくる辺り、私を嫁に迎える覚悟がないんじゃないですか!?」
「……」
遂に爆発してしまった鬱憤に彼がパチクリと瞬きを繰り返す。そして暫くしてふっと吹き出したかと思えば、おかしいように眉間に皺を寄せて笑い始めた。
「ははは! 確かに、そうなのかもな」
「ま、間宮さん?」
「覚悟、だよな……」
間宮さんが壊れてしまった、と心配せる私に彼はとびきり優しく微笑んだ。その笑顔は私は今まで見てきた間宮さんの笑顔で最も優しさで溢れていた。
「分かった。それじゃあ行こうか」
「あ、行くって何処に……」
突然立ち上がった彼に見上げると間宮さんは口元をニヒルに歪める。
「覚悟を決めに、だよ」