間宮さんのニセ花嫁【完】
真っ白な照明に当てられた空間でショーケースに飾られた大量の煌びやかな指輪たちを目の前に、私はここまでの記憶と共に言葉まで失ってしまった。
お、可笑しい。さっきまで間宮さんの部屋にいたはずなのに、いつのまにか有名ブランドのブライダルジュエリー店の中にいる。
「好きなやつ選んでいいからな」
「好きなやつって言われても」
覗き込んだショーケースの中に並べられた指輪は値段が書かれていなくともその価値の高さは明白で、軽率にこれとは言いづらい状況。
というか休日のはずなのにどうして私たち以外にお客さんがいないのだろう。
「ま、まさか貸切……?」
「周りに人がいたら気が散ると思ってな」
「値段が書かれていないのも?」
「気にすると選べないと思って店に言って伏せさせてもらった」
そんなところにまで配慮が行き届いていたのか。というか準備周到すぎてもはや怖い。
間宮さんが言った「覚悟を決める」って結婚指輪を買うってことなのか!?
「そんな、偽装結婚なのにこんな高い指輪買って大丈夫なんですか?」
「むしろ付けていない方が疑われないか? それに婚約指輪じゃなくて結婚だからそこまで値は張らないよ」
「でも離婚した後はどうしたら」
「それは飛鳥に任せるよ。普段から使ってくれてもいいし、売ってくれてもいい」