間宮さんのニセ花嫁【完】

私の視線に気が付いた間宮さんが否定し終える前に店員さんに頼んでその指輪をショーケースの上に出してもらっていた。
直接見ると更に真ん中の宝石が眩しく光り輝いている。やっぱりこれ、ダイヤだったりするんだろうか。


「佐々本の指に似合いそうでいいんじゃないか？」

「で、でも……」

「いいから」


たまに出てくる強引な間宮さんが指輪を掴むと私の右手を取ってその薬指にリングを嵌めた。
どうして右手？と不思議に思っていると彼は「やっぱり」と目尻を下げる。


「よく似合ってる、可愛いよ」

「っ……」


まるで本当に間宮さんと結婚するみたい。ううん、結婚するんだ。


「（不思議な感覚だ……）」


あんなに夢に見ていた結婚をこんな形ですることになるなんて。
しかし何故だか今は清々しい気分でここに立っている。

天井に照明にかざして見せた右手の薬指に輝くリングは、どういう理由で自分が存在しているのか知っているのだろうか。


「（関係が嘘でも、この指輪は嘘じゃない……）」


きっと関係がなくなっても、この指輪だけは私たちが夫婦だったことを覚えてくれているのだろう。
ここから私たちの新しい結婚生活が始まっていくんだ。

偽装結婚ですけど、ね。