間宮さんのニセ花嫁【完】
初めは想像が付かなかった結婚生活だが、思いの外快適に過ごせている。
今まで休日だけだったのが平日まで間宮家で凄くことになったので以前よりも彼の名前を呼ぶことへの緊張感はあったが、元々彼の家族とは上手くやっていたので嫁姑問題などはなく安心だ。
梅子さんも稽古の時は厳しいがそのお陰で鍛えられたメンタルのお陰でそんじょそこらのことでは凹まなくなった。
ただ一つ、問題点があるといえば……
「あ、千景さ……」
営業から帰ってきた間宮さんに他社からの伝言を伝えようと声を掛け、私はたらりと冷や汗を掻いた。
思いっきり社内で間宮さんを名前で呼んでしまった。周りからの不審そうにする視線が集まり血の気が引いていくのが分かる。
「え、ーと……地下原発って、結局どうなったんでしたっけ?」
言い間違いを誤魔化そうと話題の方向展開を図ると弥生が「なに、急に政治的なこと話し出して」と呆れた表情を浮かべる。
あ、危ない。こんなところで名前を呼んでしまったら芋蔓式に偽装結婚のことまでバレてしまいそうだ。
「地上が危ないからって地下に作るって、そう言う問題じゃないって感じですよねー」
「そして何故柳下が答える」
松村さんも勉強くらいしたらどうですか?と弥生を煽る柳下くんに乾いた笑いを漏らす。あ、焦った。