間宮さんのニセ花嫁【完】



ふと間宮さんのことを見れば彼は困ったように眉を下げながら「気を付けてな」と私にしか見えないように口パクで注意を促す。

ぬ、ぬわ〜。


「(言いたい、この人私の旦那様なんですよって。ここで叫びたい)」


そうすると怒る悲劇が簡単に想像出来るので絶対しないが、突然そんな衝動に駆られることは少なくない。それくらい間宮さんが旦那さんってことは凄いことなのだ。



間宮さんちの広いお風呂をいただくと自室に戻らず居間へと足を踏み入れる。
すると梅子さんが座布団に座りテレビの画面を見つめていたので思わず入り口で立ち止まった。


「どうしたのです、入るなら入りなさい」

「は、はい!」


一応結婚を許されたとはいえ、やはり夫のおばあさんと二人きりは気まずいものがある。
テーブルを挟みテレビを眺めていると若者向けの歌番組が流れていた。五人組の男性アイドルグループのパフォーマンスを集中して見る梅子さんに「こういう番組も見るんだ」と意外に思う。

暫くして居間の襖が開き、中に入ってきた桜さんが私を見つけるなり嬉しそうに近付いてきた。


「丁度よかった。これ見てくれない?」


そう言って彼女がテーブルに広げたのは旅行のパンフレットだった。温泉を中心にまとめられているそれには優雅な眺めの露天風呂や旅館自慢の懐石料理などの様子が掲載されている。


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