間宮さんのニセ花嫁【完】



数週間後、最後まで桜さんの提案を断ることができず、十月の三連休を活用し一泊二日の新婚旅行に行くこととなった二人。


「お土産楽しみにしてますね」


いってらっしゃいと満面の笑みで送り出す桜さんを前にして「やっぱりやめます」とは言えず、土曜日の早朝に荷物を積んだ車に乗り込むこととなった。
運転席に座る間宮さんは「悪い」と申し訳なさそうに、


「母は暴走すると手が付けられなくて。俺たちが式を挙げないことへの鬱憤が爆発したようだ」

「な、なるほど……」


結婚式を挙げないことを伝えた時の桜さんの落ち込みようは今思い出しても半端じゃなかった。
ご飯が作れなくなるほど寝込み、一週間ほど自室に引きこもってしまったので間宮家の家事体制が一気に崩れて大変だったことを覚えている。あの大変さを味わったこともあり、今回の提案を断れなかった。

でも私たちの式、本当に楽しみにしててくれたんだな。


「美味しいお土産買って帰りましょう!」

「そうだな。向こうに見張りはいないだろうし、着いてから部屋は別にしてもらおう」


旅行に行くとなってから私たちは何度もシミュレーションを繰り返し、『新婚旅行(仮)計画』を立てた。その通りでいけばきっと無事に旅行は終わるはずだ。


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