間宮さんのニセ花嫁【完】
「本当にすみませんでした!」
私は桜さんが予約してくれていた部屋の畳の上で間宮さんに向かって土下座をしていた。慌てて彼が身体を起こしてくれたが自分の親の行動力を舐めていたことに深く反省する。
「私が母に話してしまったばかりに」
「飛鳥のせいじゃないだろう」
「でも……」
うぅ、と嘆かわしい声が漏れ出た。
「まさか部屋まで隣だなんて!」
「声が大きいと隣に聞こえるぞ」
「うっ、そうでした……」
そう、まさか泊まる部屋も隣同士になってしまい、私たちは完全に逃げ場を失ってしまった。
彼は「困ったな」とテーブルに肘を付けて窓の外を見つめる。
「隣だと流石に部屋を別々にした場合バレる可能性が高い。いつ部屋に来られるかも分からないし」
「すみません……」
「……飛鳥が責任を感じることじゃない。娘のことが心配になる気持ちはよく分かる」
そう言って微笑んでくれた間宮さんに少しだけ心が救われる。
部屋を引っ越すとき、流石に親に黙っては無理だったので結婚したことは伏せて二人には間宮さんの実家にお世話になると説明した。
間宮さんの家族の元で花嫁修業するつもりだと話すと、端から私たちの結婚に賛成だった二人は大いに喜んだ。それもあって間宮さんに会いたくて今回みたいな行動を取ったんだろうけど。