間宮さんのニセ花嫁【完】
それから部屋に戻ったけれど、部屋を分けなくてよかったと実感した。何故なら隣の部屋の母と父が訪ねてきて、ずっと私たちの部屋に居座ったからだ。
父のお酒の相手をする彼に申し訳なく思いながらも、会話の途中で「実の父親は仕事が忙しくてなかなか会えないから嬉しい」と話してくれた間宮さんの言葉に胸が温かくなった。
アルコールで睡魔が回り始めた父を連れて母が部屋に戻っていったのが11時半過ぎ。私たちは顔を見合わせるとふと沈黙が広がった。
「寝るか」
彼の一言に肩がピクリと反応し、あからさまに意識していることがバレてしまった。
「俺はこっちの和室で寝るからベッドを使ってくれないか?」
「っ、和室って布団とかないじゃないですか!」
「座布団があれば眠れるから大丈夫だ」
だからってこんなところで雑魚寝なんかしたら間宮さんが風邪を引いてしまう。私を意を決すると彼の手を引いて襖で遮られていた寝室へと向かう。
改めて二人用のベッドと対峙すると私はそのサイズを目視する。
「このサイズなら二人で寝ても広そうですし、端っこで寝たらお互いのことを気にならないかもです」
「……本気で言ってるのか?」
「千景さんこそ、私に気を遣い過ぎだと思います」
ね?と私はベッドの反対側に回るが、彼の反応が良くなることはなかった。