間宮さんのニセ花嫁【完】



適当に花を生けた花留めと向き合うことかれこれ一時間。私はぐぬぬと秋の花であるコスモスを持った手が右往左往と動き回る。
とうとう痺れを切らした梅子さんが「これ!」と扇子で床を叩く。


「生けるなら生けるで早くしなさい! 花が枯れますよ!」

「ほ、本当にここでいいんでしょうか? バランスが悪いような」

「元々壊滅的なセンスなのですから悩んでいても仕方がないでしょう」

「酷い!」


意を決し、コスモスを中央より右寄りに生けるとふうと一息をつく。見比べてみても梅子さんのお手本とは月とスッポン並みの差がある私の作品。
昔からこういう美術センスは持っていなかったため、茶道よりも生け花の方が苦戦するのは目に見えていた。


「間宮家の嫁たるもの、茶道に限らずどの分野でも秀でた才能をお持ちではないといけませんよ。貴方がこの家に相応しい嫁になるまでビシバシ鍛えますから」

「(ひ、ひえ〜!)」


折角間宮さんと結婚出来たのに、それでも梅子さんの稽古は終わらないらしい。彼との偽装結婚の契約が切れるまではこの厳しい稽古に耐え続けなければならない。
さぁ続きを、と諭されここからどう挽回しようかと頭を捻らせていると部屋の外から「失礼します」と声が聞こえてくる。

視線を向けると開いた扉から間宮さんの顔が現れた。


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